×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

彷徨う者達
                                                      執筆者・きさと

「あの幽霊船は『フェザー海賊団』に違いない!」

ドーヴァー海峡を渡る船乗りの間で、囁かれている噂があった。

事の発端は、パリからキャメロットへ旅人を乗せて渡って来た船の船頭と乗客が、キャメロットの停留所で騒ぎ出した事であった。その船に乗っていたのは、船頭を合わせて5人であったが、5人が5人皆、ドーヴァー海峡の霧の中、闇夜の奥に弱弱しく揺れる小さなかがり火が突然現れ、それがだんだん強さと大きさを増し、次の瞬間には今すぐにでも衝突するぐらいにまで、接近してきたと言うのだった。その船と言えば、今にも沈没してしまいそうな程に、所々痛んでおり、帆は穴と継ぎはぎだらけ。海峡とは言え、とても航海出来るような船ではなかったと言う。

「本当にあのフェザー海賊団だったのか?」

 間違いない、あの船体に書かれた翼の絵。乗客の一人は指で宙に翼の絵をなぞりながら説明をした。その乗客達の脅えきった表情と震えた声を聞いて、それが嘘だと思って信じない者もいたが、停留所にいた多くの者は、乗客や船乗りの話を信じ、噂は徐々に広がって行き、やがてドーヴァー海峡を渡る船には、武装をした警備兵や傭兵が乗り合わせるようになった。

「さっきドレスタットから来た人が言ってたよ。目つきの悪い警備兵と目が合って、嫌だったって」

「ボクも嫌なんだけどね。レイジュさんがそうやってボクの目の前にいるのがねっ!」

 もう半分以上飲み干したミルクのカップを手にしながら、ユニ・マリンブルーは前の席に座っているレイジュ・カザミに視線をやった。

「僕がそんなに嫌?僕の事、そんなに嫌い?」

「その葉っぱ一枚の格好、好きとか嫌いとか以前の問題だと思うけどね!」

 肩につくかつかないかぐらいの金色の髪を揺らしながら、ユニは目の前で頬を紅潮させて、こともあろうかこんな人の多いところで、ブナの葉を男の大事な部分につけて喜んでいる赤髪の男から視線をわざとずらした。

 ユニはイギリス貴族の母と海賊である父との間に生まれたが、その事が母親の父の怒りを買い、生まれてから13年間、イギリスの遥か南にある名も無い孤島で暮らしていた。広い世界に憧れ、そしてユニがまだ生まれて間もない頃にされた樽流しに海賊の父がこの世界のどこかで生きているかもしれない、という話を聞き、病弱な母を島へ残して、このキャメロットへやってきた。明るい性格のユニは、まるで環境の違うキャメロットでの生活に、最初は戸惑ったものだが、冒険者となってギルドを中心に活動している間に、たくさんの冒険者の仲間にめぐり合う事が出来た。その冒険者の仲間の一人が、レイジュであった。

 葉っぱ男の称号をギルドから受けたレイジュ・カザミは、顔つきがイギリスに住んでいる人々と少し違う。鼻がやや低く、彫りの浅い顔であるのは、彼の血筋が遥か遠い島国・ジャパンにあるからだと、ユニは聞いた事があった。口を開かずに大人しくしていれば、ただの剣士にしか見えないが、イギリスの変態達を退治するなどと言って、変態達を相手に服を全部脱ぎ捨て、葉っぱ一枚になった所はある意味度胸がある行為と言えるが、あまり一緒にいてほしくはないものだ。しかも、本人はそれがいかに恥ずかしい格好という事かと言う事に、まるで気がついていないようなのがまた、救いようがない。

「だから、僕はこの姿で数々の変態達を倒したって言ってるじゃない」

 もう何本目かわからないほどに、今日は夜更かしをして気の抜けたエールを飲み続けていた。

「あまり自慢出来る話じゃないと思うよ」

 ほぼ全裸の姿を視界になるべく入れないようにしながら、ユニはレイジュの言葉に顔をしかめて見せた。

「ま、それはともかく。船着場は大変みたいだね。ドーヴァー海峡に幽霊船が出るとかで、警備も強化されて。けど、ガラの悪い連中と船に乗り合わせた人は、幽霊船を恨みさえするみたいだよ?」

 酒場から出て行った者が扉を開けっ放しにしたので、外の冷たい空気が流れ込んで来て、一気に寒くなったのだろう。レイジュは脱いだ服を着ながら、キャメロットで噂されている話を続けた。

「その話はボクも聞いたよ。もう何十年も前に滅んだっていう、フェザー海賊団が幽霊船になって、ドーヴァー海峡に現れるって言うんでしょ?僕は海賊のいる島で育ったからね、その辺の事は人よりも詳しいつもりだよ。フェザー海賊団って言うのは、海賊旗に翼を用いた海賊団で、30年ぐらい前にイギリスを中心とした海で、当時最も恐れられていた海賊だよ。確か、キャプテン・ボーンって言うのがリーダーだったんだけど、ある日ぱたっといなくなったんだって」

「あまりにも悪事を働くから、海の神の怒りに触れたって、皆言ってるよね。海の学者達は、クラーケンに襲われたんだろうって言ってるけど」

 最後の気抜けエールを飲み干しながら、レイジュがユニ言葉に話を続けた。

「レイジュさんも、ある意味神様の怒りに触れそうだけど。まあ、とにかく、そんな事があってからは、ノルマンへの航海も少しは安全になって、旅人の行き来も多くなったみたいだけどね」

「そろそろ店じまいだよ。さ、その兄さんに送ってもらいなよ、お嬢ちゃん」

 酒場の女店員が、皆が飲み散らかした酒の杯を片付けながらユニに声をかけた。いや、そこのお兄さんってのが一番危険なんだけどと、ユニは喉まで言葉が出掛かっていたが、面倒になったので黙って頷いた。

「僕はレ、イ、ジュ〜、キャメロットの葉っぱ男、世界のヒーロ〜♪」

「そんな恥ずかしい歌、よくもまあ、こんな大きな声で歌えるね」

 酒場から出て、冒険者街に向かっていた。イギリスという北国に特徴的な、乾燥した寒さが、ユニの肌に突き刺していた。

「そろそろ、冬服用意しないとなあ」

 もう店は閉まっていたが、そばにある洋服店の看板を見つめながら、ユニはつぶやいた。

 レイジュはといえば、気が抜けているエールとは言え、かなり立て続けに飲んでいたため、酔いがピークに達しているようで、踊りながら歩いている。すぐ横を流れている、テムズ川にレイジュを捨てても、この人なら自力で帰って来るかもしれないと思いながら、ユニは流れる冷たそうな川に目をやった。

「あそこだっ!!!」

「えっ?」

 背後で男の声が響き、複数の足音を聞いた時にはすでに遅かった。屈強な体をした男達が自分の体をつかんだ所までは覚えていた。体に衝撃が走り、意識が遠くなり、その後の事は覚えていない。

 ユニが目を覚ました時、目の前には木の格子がはまった、暗い部屋に閉じ込められているのだと気づいた。

「あっ、装備がない!」

 最後の記憶、酒場から出てきて歩いている時には、確かに身につけていた弓矢が、今はどこかへ行ってしまっていた。一体自分の身に何が起きて、今の状況を把握しようとしたが、さっぱり検討がつかない。しかし、牢屋のようなところに入れられている状況からして、あまり良い立場にいるわけではない事を理解した時、ユニは心の奥から不安と恐怖がにじみ出てくるのを感じ取った。

「レイジュさん?」

 暗くてはっきりとはわからなかったが、すぐ前の牢屋に、赤い髪の人間が倒れているの事に気づくと、ユニは格子を握りこぶしで叩いて音を立て、その人物に自分の事を気づかせようとした。しかし、それは、別の人物をおびき寄せてしまったのだ。

「静かにしろ!」

 その人物を見た瞬間、ユニは黙り込んでしまった。その男は、筋肉隆々の体をしていたが、半透明であり、その男の体の向こうに後ろの景色が透けて見えていた。

「幽霊?」

 それを見れば、皆そう言うに違いないだろう。顔はまるで髑髏のようで、顔の奥に真っ赤な眼球が蠢いていた。ユニは声を失ってしまったが、恐怖に飲み込まれまいと心をしっかりと奮い立たせ、重い喉からやっとの事で声を絞り上げた。

「何でボクをこんな」

 それしか言う事が出来なかった。

「お前は必要ない。儀式が終わったら海に捨てる」

「えっ?」

「我等に必要なのはそこの男だけだ」

 ユニはもう一度、倒れている赤い髪の人物に視線を向けた。今度は暗闇の中で目が慣れてきて、その人物を先程よりも良く見る事が出来た。とは言っても、昼間の太陽の下とはまるで違うが、赤い髪の横に鳥の羽の装飾品を確認する事が出来た。

「レイジュさんを?」

 鳥の羽のピアスは、レイジュが好んで身につけているアクセサリーと言う事を、ユニは知っていた。

「あいつはキャメロットの葉っぱ男。つまりは上質の変態だ。あれ程の変態もそんなに多くはいまい。そして、あれを生贄に捧げた時、我らの呪いは解けるのだ」

「ちょ、ちょっと待って」

 男の幽霊の声は、その一言一言が心の奥底に冷たい恐怖を与えてくるように響いているのであったが、その言葉を聞いた時、ユニは急に恐怖心がなくなった。

「それ、どういう事?キミ達、ボクをどうするつもり!」

「何度も言わせるな。お前は必要ない。海の神は葉っぱ男のみをお望みだからな」

 それはどういう神なんだ、というかそんなんでも神と言えるのか、と思いながら、男の幽霊をにらみ付けた。

「じゃ、レイジュさんをどうするつもり?」

「レイジュ。葉っぱ男の事か」

男は薄気味悪い笑みを浮かべた。元々顔が薄気味悪いのであるが、ゆがんだ笑顔がその顔に乗せられると、その不気味さが輪をかけて恐ろしいものとなるのだが、ユニの最初に感じた恐怖心だけは、どこかへ飛んでいってしまったようだ。

「それなら、ふふ、それならお前にも見せてやろう。お前の友達の最後と、我々の呪いが解かれるところをな」

 いや、別に見たくない、と言おうとしたが、ユニは何時の間にか幽霊の後ろにいた髭を生やした小男に腕をつかまれて、もがこうとした瞬間に手足を縛られ、猿轡を噛まされ、布で顔を縛られてしまった。いくら声を出そうとしても、猿轡が邪魔でうなり声しか出す事しか出来ない。視界を塞がれてしまったから、ユニには自分がどこを移動しているのかもわからなかったが、体で受ける感覚からして、地下深い場所へ連れて行かれているようだった。じめじめとした不快な空気と、潮の香りが、この場所が海にかなり近い場所である事をユニに教えてくれていた。

 目に当てられていた布を取り去られたユニは、一瞬その光景の美しさに、今自分が置かれている状況を忘れそうになってしまったぐらいだった。

 湿気の高く不快な場所である事には違いなかったが、目の前にまるでサファイアのような美しい海水であろう池があり、その池の底でたくさんのエメラルドの光が揺れていた。池の中心に人が数人しか乗れそうにもない小島があり、小島の上には祭壇のような物が置かれていた。この場所はかなり深い地底のようであったが、小島の上は空洞になっていて、空を見ることは出来ないが淡い光が島に降りかかっているところから、上に行けば外に出られるのかもしれない。その光が洞窟の壁を青白く照らしているのが、何とも言えず幻想的であったが、まわりにいる男達に目をやった時、ユニはその夢のような光景から一気に現実に引き戻された。

 牢屋にいた男と同様に、男達は皆体が透き通っていた。一人だけ、先ほどユニを担いだ小男だけは透き通っておらず、普通の人間のようであったが、何で幽霊達と一緒にいるのかはわからない。

「我々が、海の神に許される瞬間が来た!!」

「数十年前、我々は神の怒りに触れ、その呪いにより、彷徨える存在となって、何十年も海を漂っていた。しかし、今この瞬間、呪いが解かれるのだ!生贄を捧げるのだ!」

 男達が口々に叫ぶその言葉を聞いた時、ユニはレイジュと酒場で話していたフェザー海賊団の事を思い出した。噂では、あらゆる悪事を働いた為、海の神の怒りに触れてどこかへ消えたと言う。しかしそれは、消えたのではなく、実は幽霊のようになって彷徨っていた。そして、それらを終わらせるには、海の神の怒りを沈める為に、生贄を捧げる。その生贄にはレイジュが選ばれ、一緒に居合わせた自分まで誘拐され、今この場所に入る。今まで起こった事や聞いた事が、パズルを完成されるように、ユニの頭の中で組み立てあげられていた。しかし、その神とは?ユニが池の中央の祭壇にもう一度目をやった時、小男がレイジュを担ぎ上げて、祭壇に置いた。レイジュは手足を縛られているようだが、いつの間にか葉っぱ一枚にされていた。訳がわからない、というような表情で、まわりを見回しているが、ユニの存在には気づかないようであった。

 ユニも手足を縛られ、猿轡は口にはまったままだし、隣に幽霊のような男がいるから、動くに動けない状況であった。どうにか出来ないものかと考え、まわりを見回していると、池の底から大きな影が浮き出し、生贄の祭壇に大きな吸盤のついた足が張り付いた。

「神の化身よ!イギリス指折りの変態を捧げます。どうか、我らを自由にしてほしい!今の我等は海を彷徨うだけの存在。自由も希望もない存在。しかし、それはあまりにも辛すぎた」

 呪いとか神の怒りとか、言っている事は凄く真面目なのに、何故変態というキーワードが出てくるのだろうか。ユニはだんだん、面倒になってきたので、あまり考えない事にしたのだが、レイジュがピンチになっている事は確かだ。あの海面から突き出ている吸盤付の足は、海のモンスター・クラーケンだろうか。クラーケンがレイジュをどうするのだろうか。ユニはもう、考えるのさえ面倒になってきてしまった。

 呪いをかけられたという男達は興奮した雄たけびを上げ、クラーケンの足がレイジュの体に巻きついた時には、歓声まで上げた。そして、次の瞬間、レイジュは祭壇から引きずり下ろされ、海面に没してしまった。

 レイジュさん!そう声を出したが、猿轡のせいでフガフガとしか音にしかならなかった。イギリスを騒がせている葉っぱ男とは言え生身の人間、海中ではそんなに長くはもたないだろう。

 その時、祭壇の側にいた小男が、弓で矢を海面に向かって放った。あれはボクの弓矢だ!ユニは真っ先に自分の武器が使われている事に気づいた。矢は海面に没したと思われたが、次の瞬間金属がこすれるような鋭い音のような声がし、巨大なイカのような生き物が水面に浮き上がってきた。すぐにレイジュの事を考えたが、レイジュもまた水面に浮き上がり、口から噴水のように水を噴出し、魚まで出している所を見ると、心配は必要なさそうだ。しかし、海に落ちた時に葉っぱが取れてしまったようで、ユニはレイジュの姿をまともに見る事は出来なかった。

 そして、不思議な事に、その小男以外の、体が半透明な男達は、皆、小男に濃い笑顔を見せ、宙に浮かんだと思うと、洞窟の上から降ってくる淡い光の中へ次々と消えてしまった。ユニは、このような光景を絵で見たことがあった。命を終えたものが、天へと上っていくという絵だ。マッチョで骸骨の様な顔をした男達が笑顔を浮かべ、次々と天へ上っていく光景は、あまり神秘的とは言えなかったが

「俺は、かつてキャプテン・ボーンと言われていた」

「えっ!?やっぱり、あのフェザー海賊団?!」

 数十年前に消えたとは言え、今でも人々を震え上がらせる海賊団のキャプテンが、ユニとほとんど身長が変わらない小男だとは、思いもよらなかった。確かに、近くで見ると年を取っているのだが、髭で顔が隠れてしまっており、洞窟の暗がりの中では、年齢を確認する事など出来なかったのだ。

 ユニとレイジュは、キャプテン・ボーンが舵を取る船でキャメロットを目指していた。すでに夜は明けかかっており、水平線の彼方に太陽が切れ端のような姿を見せ、空はグラデーションのように、白から薄い青、夜の濃い紺色に彩られていた。

「神の怒りに触れたっていうのは本当だったんだね?」

 レイジュは散々な目にあった割りには、もう元気になっていた。さすがは数々の変態達を相手にしてきた葉っぱ男と言うべきか。大事な葉っぱを無くしてしまったが、海の上では葉っぱを手に入れる事が出来ないので、代わりに海面ですくい上げた海草を貼り付けていた。

「そうさ。数十年前、近くの入り江の町を襲い、食料と金目の物と女を略奪した後、俺達はパリへ移動していた。その時、突然クラーケンに合い、船は横倒しにされ、皆海中へと投げ出された。俺はたまたま酒樽にしがみついて、横倒しになった船の陰にいたおかげで助かったが、あとの連中は皆クラーケンに襲われ、あんな姿になってしまった。皆、命を落とし、この世を彷徨う亡霊になちまったのさ。しかし、皆自分が死んだ事に気づいていない。認めないっていうべきか?この世に留まる幽霊ってのは、未練があるからだろ?俺は、せめてあいつらをこの未練から断ち切って、天へ昇らせてやりたいと思ってな。ずっとあのクラーケンを追っていたんだ。このフェザー海賊団自慢の船でな。クラーケンに襲われたせいで、かなりボロになっちまったが」

「それは何となく解るけど、何でボク達を誘拐したりしたのさ!!」

 海の向こうに島が見えていた。少し前、ユニが初めてイギリスに来た時も、今と同じ景色を見た事がある。海岸に見える石造りの建物や町並み。ユニ達はイギリスへ戻って来たのだ。

「クラーケンの情報を追っているうちに、クラーケンはイロモノで変態的な男が好きだという情報を手に入れた。だから、クラーケンをおびき寄せる為に、イギリスでトップクラスのイロモノ男を、エサに使おうって事にしたのさ。キャメロットでイロモノは誰だと聞いたら、皆、口々に葉っぱ男の名を出したからな」

「って言うか、クラーケンがイロモノ好きなんて聞いた事ないよ〜!クラーケンはそういう生き物じゃないと思うけど。何でそういう偏った噂を信じてるのさ!」

「人間にだって色々なのがいるだろ。クラーケンにだって、色々いるんだよ。ま、あのクラーケンが、俺達を襲ったクラーケンかどうかはわからないが、野郎どもは、納得して天へ昇っていったから、どっちでもいいんだよ」

 ちっともよくないよ、とユニは小さくつぶやいた。

「必要なのは葉っぱ男だけだが、隣にチビっ子のお前がいたからな。見逃して騒がれても面倒だし、葉っぱ男でクラーケンが釣れなかった予備エサとしていてもいいと思った」

「予備エサ!!随分な事を言うね!その、ボク達を怪物のエサとしてしか見ない人が、よくもボク達をキャメロットまで帰してくれる気になったね」

 少し嫌味っぽく、言葉の終わりの音を吊り上げてユニはキャプテン・ボーンへ言葉を返す。

「もう俺達の時代は終わった。これは俺の最後の親切心だ。野郎共を本当に天へ行かせる事が出来ると、思ってなかったからな。俺は今でも、一人になっちまった今でも、海賊団を愛しているのさ。お前達を送り届けたら、俺もヤツらのところへ行く」

 えっ?とユニは思わず声を上げた。その先は、3人とも黙り込んでしまい、一度も言葉を交わす事はなかった。

 やがて、船はキャメロットの停留所へ到着した。まだ夜は明けていないせいか、港は静まりかえっており、人の気配はほとんどなかった。船は相変わらず傷つき痛んだままであったが、海賊船ではテムズ川の入り口で警戒される為、海賊旗は降ろし、代わりに海で拾ったワカメを旗代わりにし、フェザー海賊団の記しも予備の帆を切り裂いて上から貼り付けて隠してしまった。だから、キャメロットまで戻る事は出来たが、ユニ達を降ろした後、船はすぐに出港し、また川を下っていってしまった。

 その後、幽霊船やフェザー海賊団の噂もまったく聞かなくなってしまった。こんな事があったと、ユニもレイジュもギルドに報告しようと思ったが、凶悪と言われる海賊団に少しでも関わりを持ってしまった事を知られるのはあまりよくないし、事件は解決したのだから何も言わないでいた。キャプテン・ボーンがどうなったかはもうわからない。

世の中にはおかしな生き物やおかしな人間達がいて、おかしな事をやる。だから、それに巻き込まれないように、日ごろから気をつけなければならないのだが、懲りもせずに目の前で服を脱いでいるレイジュは、またそういう事件に巻き込まれるだろうなと、ユニはミルクを飲みながらため息をつくのであった。

(終)



■当サイト4000ヒット、キリリクノベルです。今回のリクはユニちゃんPLのすずも様です♪

ユニちゃんのキャラ設定のモデルが映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』にあると言うことで、海をテーマに、海賊を登場させてみました。時代的には大航海時代より少し前になるので、どちらかと言えばバイキングの印象が強くなりそうですが、ここではパイレーツの世界観の方を前面に出しております。

ギャグOKという事なので、やっぱり変です(笑)レイジュも一緒に、という事だったので、彼には生贄になってもらいました。やはりシリアスタッチなのですが、やっている事とかキーワードがおかしい(笑)ギャグというか、イロモノに近いです(爆)クラーケンがレイジュをどうしようとしたかは、ご想像にお任せしますが(ぇ)

映画を見た方ならおわかりになると思いますが、元ネタをところどころに仕込んであります。レイジュが生贄に捧げられるところや、呪いをかけられて幽霊の姿に(映画では生きるゾンビで、死んだことがわからない亡霊ではないんですけどね)なるところか、そのあたりですね。